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小鼻の横の痛みの理由が、母の愛だった件。

院長の増田です。

今回は、ある女性のケースのご紹介です。

 

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主訴は、「鼻の右側が痛む」という訴え。
思い当たる原因は?と聞くと、特に無いという。


痛い部分を触れてみると、若干のむくみがある。


顔の他の部分は、特にリンパの滞りなども無く、鼻の右側だけが、少しむくんでいて、触れると痛いという。

鬱滞が起こり、痛みがある部分は、炎症症状が疑われる。

「炎症」というと、通常は怪我をした時や、細菌感染した場合がまず思い浮かぶけれども、この時期の炎症は、アレルギーも関連する。

花粉、黄砂やPM2.5などの物質が、鼻炎をはじめとする炎症症状を引き起こす。


炎症はひとまず良いとして、なぜ鼻の横だけ痛いのだろう?

 


こういった局所の滞りや炎症は、リンパの流れが悪い部分で起こりやすい。
もともと流れが悪い体に、アレルギー症状が合わさることで、局所的に症状が悪化したと思われる。


リンパの流れが正常になれば、この手の炎症は改善していくので、どこで流れが悪くなっているかを細かくチェックしていく。

むくんでいる箇所を触りながら、どこを治療したらむくみが取れるかを確認した。

後頭部の髪の生え際のあたりに触れると、患部がやや緩んだ。
しかし、流れる様子が無い。

顎に触れると左側に厚みがあり、噛みこんだような痕がある。

 

「夜間の噛みしめかなぁ?」と疑ってみたが、顎の筋肉の緊張はなく、噛みしめや歯ぎしりをしているような所見はない。


「過去に事故か、大きな怪我をしたことがありましたか?」と聞くと、昔、妊娠時に横から突っ込まれる交通事故があったという。

腰の骨の両脇を押すと、痛い部分が左右に有り、横から突っ込まれたであろう交通事故のイメージと一致した。

両足を持って右に動かすと、「痛みが無くなった。」という。
そのまま腰を治療。

痛みは消えた。

過去の交通事故で起こった腰椎と骨盤のねじれが、背骨を伝い、後頭部に緊張を作り、顔面の骨にもねじれを生じさせる。

そのねじれは、顔面右側部分を圧迫して、リンパの通り道を圧縮して、流れを悪くしていた。

顎の厚みは、おそらく過去の事故の際に強く噛みこんだもので、ねじれながら噛んだ衝撃は、斜め上へ向かい、鼻の右側の滞った場所に届いたのだろう。

そのまま体がねじれてしまうのを、強く噛むことで防いだようだ。

 

妊娠時の事故ということで、お腹の中の子供を衝撃から守るため、強く噛んで、お腹に衝撃が行かないように姿勢を保とうとしたのだろう。


妊娠中のお母さんというのは、無意識にお腹を守り続けていて、車にぶつけられても、瞬時にお腹が守られるように反応する。

花粉、黄砂のアレルギーから、妊娠時の事故と、そこから子供を守ろうとする母の思いまで、いろんなものが詰まった時間だった。


これが時間にすると5分くらいの出来事でひとつの症状の裏にある物語と、そこにある母の思いの深さを感じた。


頭で考えて、「あれが出来ていない。」とか、「これが出来ていない。」とか、自分の母親としての行動を認められない人もいるかもしれないけども、でも、体はいつも全力で子供を守っている。

無意識に与えている愛情がある。


愛情が深いほど、目指す母親としての理想的な姿とのギャップに葛藤するものかな、とも思った。

 

 

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これまでも、妊娠中の方、産後のケアの方、子育て中の方、いろいろな年代の女性の治療をしてきたけれど、自分が父親になり、以前に比べてよりリアルに

親としての気持ちを感じられるようにもなったと思う。

 

検査すること、確認すること、治療すること、やることは何も変わらないけれど、理解が深まるほどに、より繊細にストーリーを感じられるようになる。

 

僕は、わからないこと、知らないことを、ひとつ理解するたび、やさしい気持ちになる。