こんにちは。
院長の増田です。
今日は、産後の体のケアについてお話しします。
先日、出産後に「腹直筋離開」と言われた患者さんが来院されました。
腹直筋離開という言葉は、あまり聞いたことがないかもしれません。
腹直筋離開とは、
左右に割れた腹筋の真ん中に、白線という つなぎ目の部分があります。
その部分が大きく左右に引き延ばされ、開いてしまうことを言います。
妊娠中は、リラキシンというホルモンが分泌され、腹部が引き延ばされやすくなります。さらに、胎児の成長とともにお腹は大きくなり、白線は引き延ばされます。
通常であれば、産後の体は少しずつ産前の体へ戻っていき、数ヶ月するころには、お腹に力も入るようになり、体のラインも本来の形に戻っていきます。
しかし、腹直筋が大きく引き延ばされたまま戻らない場合があります。これを腹直筋離開といいます。
腹直筋が離開するとどうなるのか?というと、
お腹を引き締める事が出来なくなるので、体幹が不安定になります。
体幹不安定から来る症状は、
・腰痛
・お尻の痛み
・肩こり、頭痛
・疲れやすい、だるい
・力が入りにくい
・イライラする
・不安になる
etc
多岐にわたります。
腹直筋離開の確認の方法は?
1・仰向けに寝て膝を立てる
2・おへそを見るように頭を上げる
3・おへその下あたりを触ってみる
4・筋肉が左右に分かれて真ん中に柔らかい部分があり、そこに触れた指が2本以上入りそうなら、腹直筋離開と考えられます。
腹直筋離開の治し方は?
エクササイズが基本ですが、腹筋はNGです。
大きく動かす運動は、腹直筋離開を悪化させる可能性があります。
ドローインを初めとするお腹を引き締めるような呼吸法がオススメです。
産後の調整に関して、以下の症状が当てはまる方には、治療をオススメしています。
腹直筋離開や骨盤の歪みと関連する症状
・腹筋に力が入らない
・何をしても疲れてしまう
・常にだるい
・朝起きられない
・腹筋に触れると穴が開いているような部分がある
・だっこをしているとすぐに腕が疲れてしまう
・体の節々が痛い
・立ったり座ったり、動くのが辛い
・病院や助産院などから指示された体操をしても治らない
・力の入れ方がわからない
・おへそが横に開いている
産後の骨盤の歪みが関連する症状
・座っていてお尻が痛い
・足を崩さないと座れない
・片側でしか抱っこできない
・膝や足が痛い、疲れやすい
・尿漏れ
実際の治療は、どんなことをするのか?というと、
骨盤の歪みの原因となっている問題を、検査、治療します。
出産時の歪みの原因には、出産時の骨盤の歪みだけではなく、ぐっと痛みをこらえて噛みしめたことで起こる顎の歪みや、眼をぎゅっとつぶり続けた事による眉間の緊張、力みから来る肩や首の緊張、なども関係しています。
産前からの歪みの原因には、体の使い方(座り方の癖、立ち方の癖、寝方の癖)や、骨盤内の癒着、胎児の圧力が関連する骨盤や肋骨の歪み、などがあります。
骨盤はもちろんですが、首や眼、顎の緊張は、全身症状と関係しているので、精密な検査が必要です。
腹直筋離開の治療は、骨盤や、肋骨の歪みを整えること。
加えて、離開部分を圧着しながら、腹部の筋肉と骨盤~下肢の筋肉を連動して使えるようにリハビリを行います。
骨盤の歪みは、腹筋に力が入りにくくなる原因になるので先に治療し、その後リハビリになります。
治療後は、体幹が安定し、座ったり立ったりが楽になり、疲れにくくなります。
治療の回数は?
離開の程度や、骨盤の歪み、その他の合併症状の有無にもよりますが、3回~5回で卒業になる方がほとんどです。
産後に腹直筋が離開したままの方は、力が入りづらい中、育児や家事に取り組んでいるため、産後の不調が少ない無い方に比べて、大きく疲労しています。
ですが、「産後の不調はこんなもの。」と思いがちです。
今回、来院された患者様も、一人目を出産した時から腹直筋が離開し、その状態で家事、育児をしながら、2人目を出産された後、どこに行っても治らないというご相談で、来院されました。
僕は、出産したことがないので、その大変さを、リアルに感じられるか?といえば、わからないことの方が多いですが、これまでたくさんの人の体をみさせてもらってきて、思ったことは、
改めて、女性ってすごい力を秘めているんだな、と感じました。よく今まで、この状態で頑張ってこられたなと、本当に頭がさがる思いです。
腹直筋離開と言われても、何が問題で、どうしたら良いのか、わからない方も多いと思います。
治療をすることで、体が楽になると、気持ちも少し楽になったりします。
そうでなくとも、体力勝負の家事・育児ですから、赤ちゃんのためにも、自分のためにも、何か不調を感じる時には、体の調整をしてあげてください。
海外では、出産直後から、赤ちゃんやお母さんへの治療が行われているところもあるそうです。
日本では、医療機関内で治療家がサポートするという施設は、ほとんど無いですが、一部の医師、助産師の方が徒手療法を学び、実践されてるようです。
もっと、このようなサポートが当たり前になっていくと良いな、と思っています。